コラム

2026.05.19

【賃上げしても社員が辞める理由とは?離職を防ぐ本質的な対策7選】

「給与を上げたのに、なぜ社員が辞めていくのか」

このような悩みを抱える経営者・人事担当者は、決して少なくありません。

2024年以降、多くの企業が人材確保や物価上昇への対応として賃上げに踏み切りました。
もちろん、給与水準の改善は重要な取り組みです。
しかし、賃上げをしたからといって、必ずしも離職が止まるわけではありません。

厚生労働省の調査などを見ても、離職理由としては「職場の人間関係」「労働条件への不満」「能力や個性を十分に生かせないこと」などが挙げられています。
つまり、社員が会社に残り続けるかどうかは、給与だけで決まるものではないのです。

「業界水準より給与は高いはずなのに、若手が定着しない」
「採用コストをかけて入社してもらった社員が、数ヶ月で辞めてしまう」
「残った社員の負担が増え、さらに離職が起きそうで不安」

こうした状況が続くと、現場の士気は下がり、既存社員への負荷も増え、さらなる離職を招く悪循環に陥る可能性があります。

本記事では、賃上げだけでは解決できない離職の本質的な原因を整理し、社員の定着につながる具体的な対策を7つご紹介します。

人材の採用・育成・定着に課題を感じている経営者、人事担当者、管理職の方は、ぜひ参考にしてください。

🔹なぜ賃上げだけでは離職は止まらないのか

給与は「不満を減らす要因」であり、「働き続けたい理由」そのものではない
結論から言えば、給与は社員の不満を減らすために欠かせない要素です。
しかし、給与だけで「この会社で長く働き続けたい」という強い動機を生み出すことは難しい場合があります。

心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」では、仕事への満足と不満足は、異なる要因によって生じるとされています。

  • 衛生要因:給与、労働環境、福利厚生、人間関係など
  • 動機づけ要因:達成感、承認、成長実感、仕事のやりがい、責任ある役割など

給与が低ければ、不満は生まれやすくなります。したがって、賃上げは離職防止において重要な施策です。

一方で、給与を上げたとしても、その効果は時間の経過とともに「当たり前」になりやすいものです。
最初は満足していても、職場の人間関係が悪い、上司から認められない、成長できる実感がないといった状態が続けば、
社員は次第に転職を考えるようになります。

つまり、離職を防ぐためには、給与だけでなく、社員が「ここで働き続けたい」と思える環境づくりが必要なのです。

🔹若手社員が重視する価値観は変化している

特にZ世代やミレニアル世代を中心とした若手社員は、働くうえで重視する価値観が多様化しています。

もちろん給与は重要です。
しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、次のような要素を重視する社員も増えています。

  •  自分が成長できる環境か
  •  上司や同僚との関係性が良好か
  •  会社のビジョンや事業に共感できるか
  •  公平に評価されていると感じられるか
  •  柔軟な働き方ができるか
  •  自分の意見や希望を聞いてもらえるか

どれほど給与が高くても、入社後の体験が悪ければ、社員は定着しません。

近年は、社員が会社で得る経験全体を指す「エンプロイーエクスペリエンス」、つまりEXの重要性も高まっています。
採用時の条件だけでなく、入社後にどのような関わり方をされ、どのように成長できるかが、定着率を大きく左右します。

これからの離職対策では、「いくら払うか」だけでなく、「どのような職場体験を提供できるか」が重要になります。

🔹賃上げ以外で離職を防ぐ7つの具体的対策

対策1:上司・部下の1on1ミーティングを定例化する

離職理由として多いのが、上司との関係性に対する不満です。

「相談しづらい」
「自分のことを見てもらえていない」
「困っていても気づいてもらえない」

こうした不満が積み重なると、社員は会社に対する信頼を失い、離職を考えるようになります。

そこで有効なのが、上司と部下による定期的な1on1ミーティングです。

ポイントは、1on1を単なる業務報告の場にしないことです。
目的は、部下の悩みやキャリアの希望、仕事への不安を聞き、成長を支援することにあります。

頻度は、週1回から月2回程度が理想です。
難しい場合でも、月1回は実施できるとよいでしょう。

1on1では、次のような質問が効果的です。

  •  最近、仕事でやりがいを感じたことはありますか?
  •  今、困っていることや不安に感じていることはありますか?
  •  今後、挑戦してみたい業務はありますか?
  •  上司や会社にサポートしてほしいことはありますか?


上司が「評価する人」だけでなく、「支援してくれる人」として認識されることで、社員の心理的安全性は高まります。
また、離職の兆候を早期に察知しやすくなる点も大きなメリットです。

1on1は、社員との信頼関係を築き、離職を未然に防ぐための基本施策です。

対策2:成長実感を得られるキャリアパスを設計する

若手社員の離職理由として多いのが、「この会社にいても成長できないのではないか」という不安です。

特に入社後数年の社員は、自分の将来に対して敏感です。
日々の業務に追われるだけで、成長している実感が持てない状態が続くと、より成長できそうな会社へ転職したいと考えるようになります。

そのため、会社としては、社員が将来をイメージできるキャリアパスを示すことが重要です。

たとえば営業職であれば、次のように段階を示すことができます。

1年目:既存顧客対応を通じて基礎を習得
2年目:新規開拓や提案活動に挑戦
3年目:後輩指導や小規模チームのリーダーを経験
4年目以降:マネジメント職または専門職としてキャリアを選択

重要なのは、単に役職の道筋を示すだけではありません。

「どのスキルを身につければ次のステップに進めるのか」
「どのような経験を積めば評価されるのか」
「本人が望むキャリアと会社の期待をどうすり合わせるのか」

これらを定期的に話し合う必要があります。

半期ごとの目標設定と振り返り、上司とのキャリア面談、スキルマップの活用などを組み合わせることで、社員は自分の成長を実感しやすくなります。
キャリアパスが明確な企業ほど、社員は「ここで頑張れば成長できる」と感じやすくなります。

対策3:評価制度の透明性を高める


 「頑張っているのに評価されない」
 「なぜこの評価なのか分からない」
 「上司の主観で評価されている気がする」

このような評価への不満は、社員のモチベーションを大きく下げます。
場合によっては、静かな離職、いわゆるクワイエット・クイッティングや転職活動につながることもあります。

離職を防ぐためには、評価制度の透明性を高めることが重要です。

具体的には、次のような取り組みが有効です。

  •  評価項目を明文化する
  •  等級や役職ごとの期待役割を明確にする
  •  成果だけでなく行動プロセスも評価する
  •  評価結果の理由を丁寧に説明する
  •  社員が自己評価を伝える機会を設ける
  •  評価者である管理職への研修を行う


特に重要なのは、評価結果を伝えるだけで終わらせないことです。

 「なぜその評価になったのか」
 「次に何を改善すればよいのか」
 「どの行動は評価されているのか」

ここまで伝えることで、社員の納得感は高まります。

評価制度に対する不信感は、会社への不信感につながります。
反対に、公平で透明性のある評価制度は、社員の信頼を高め、定着率の向上にもつながります。

社員が納得できる評価制度は、離職防止における重要な土台です。

対策4:管理職の負荷を組織全体で分散する

離職対策を考えるうえで見落とされがちなのが、管理職の負荷です。

多くの企業では、管理職がプレイヤーとしての業務を抱えながら、部下の育成、評価、面談、目標管理、トラブル対応まで担っています。

その結果、管理職自身に余裕がなくなり、部下へのフォローが後回しになってしまうことがあります。

部下からすると、次のように感じてしまいます。

 「相談したいけれど、上司が忙しそうで声をかけづらい」
 「入社してからあまりフォローされていない」
 「自分の悩みを誰も分かってくれない」

この状態が続くと、社員の孤立感は強まり、離職リスクが高まります。
そのため、管理職の負荷を組織全体で分散することが重要です。

具体的には、次のような施策が考えられます。

  •  管理職の業務を棚卸しする
  •  定型業務をITツールで効率化する
  •  会議や報告業務を削減する
  •  部下育成の一部をメンターや人事が支援する
  •  管理職向けのマネジメント研修を実施する
  •  プレイング業務とマネジメント業務の比率を見直す

管理職が部下と向き合う時間を確保できなければ、どれだけ良い制度を作っても現場では機能しません。

管理職に余裕を生み出すことは、部下の定着を支える重要な組織施策です。

対策5:社内コミュニケーションを活性化する

テレワークやハイブリッドワークの普及により、社員同士のつながりが希薄になっている企業も増えています。

業務上のやり取りはできていても、雑談や相談、ちょっとした声かけが減ることで、社員は孤立感を抱きやすくなります。

特に新入社員や中途入社者は、人間関係ができる前に孤立してしまうと、早期離職につながる可能性があります。

社内コミュニケーションを活性化するためには、自然発生的な交流に期待するだけでなく、会社として意図的に「つながりの場」を設計することが大切です。

たとえば、次のような取り組みがあります。

  •  部署を越えた交流会の開催
  •  オンラインランチや雑談会の実施
  •  社内チャットでの称賛・共有文化づくり
  •  新入社員向けの交流機会の設計
  •  部署横断プロジェクトへの参加機会の提供
  •  上司以外に相談できるメンター制度の導入

重要なのは、単なるイベントで終わらせないことです。

社員が「この会社には相談できる人がいる」「自分を気にかけてくれる人がいる」と感じられる状態をつくることが、離職防止につながります。
人は、つながりを感じられる場所に安心して居続けることができます。

対策6:柔軟な働き方の選択肢を広げる

給与水準が同程度であれば、「働きやすさ」が企業選びの決め手になる時代です。

特に、育児・介護・通院・学習・副業など、社員が抱える事情は多様化しています。
画一的な働き方しか認められない職場では、優秀な社員であっても働き続けることが難しくなる場合があります。

柔軟な働き方を実現する制度としては、次のようなものがあります。

  • フレックスタイム制度
  • リモートワーク制度
  • 時短勤務制度
  • 副業・兼業制度
  • 育児・介護との両立支援
  • 時間単位の有給休暇
  • 勤務地や勤務時間の選択制度

ただし、制度を作るだけでは十分ではありません。

 「制度はあるが、実際には使いづらい」
 「利用すると評価が下がりそうで不安」
 「上司や同僚に迷惑をかけると思って申請できない」

このような状態では、制度は形だけになってしまいます。

柔軟な働き方を定着させるには、制度の周知、管理職の理解、利用者への公平な評価が欠かせません。
柔軟な働き方は、社員の人生を支える制度であり、長期定着を促す重要な施策です。

対策7:入社後オンボーディングの質を高める


離職リスクが特に高いのは、入社後3〜6ヶ月の時期です。

この時期に、次のような違和感が生まれると、早期離職につながりやすくなります。

 「思っていた仕事内容と違う」
 「職場に馴染めない」
 「誰に相談すればいいか分からない」
 「放置されているように感じる」
 「入社前に聞いていた話と違う」

こうした早期離職を防ぐためには、入社後のオンボーディングを丁寧に設計する必要があります。

具体的には、次のような取り組みが有効です。

  • 入社初日の受け入れ体制を整える
  • 業務内容や期待役割を明確に伝える
  • メンターやバディを配置する
  • 入社1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月で面談を実施する
  • 人事と現場が連携してフォローする
  • 早期に小さな成功体験を得られる業務を任せる

オンボーディングで重要なのは、業務説明だけではありません。

新入社員が「この会社に受け入れられている」「自分はここでやっていけそうだ」と感じられることが大切です。

最初の半年間の体験は、その後の定着に大きく影響します。
オンボーディングの質を高めることは、早期離職を防ぐための最も効果的な施策の一つです。

🔹対策を進めるうえでよくある失敗と注意点

失敗例1:制度だけ作って運用されない

 「1on1を導入した」
 「キャリアパスを作成した」
 「評価制度を見直した」

このように制度を整えても、現場で正しく運用されなければ効果は出ません。

特に1on1や評価面談は、管理職のスキルによって成果が大きく変わります。
管理職が目的を理解していなかったり、面談の進め方が分からなかったりすると、制度は形骸化してしまいます。

制度を導入する際は、次のような運用支援もセットで行いましょう。

  • 管理職向けの研修を実施する
  • 面談シートや質問例を用意する
  • 実施状況を定期的に確認する
  • 人事が現場の相談に乗る
  • 社員からのフィードバックを集める

制度は、作ることではなく、現場で機能させることが重要です。

失敗例2:社員の声を聞かずに施策を決める

経営側や人事が「これが良いはずだ」と考えて施策を導入しても、現場のニーズとずれていれば効果は出ません。

たとえば、会社は社内イベントを増やしたつもりでも、社員が本当に求めているのは評価制度の改善かもしれません。
あるいは、出社を増やしてコミュニケーションを活性化しようとしても、社員にとっては柔軟な働き方が失われる不満につながる可能性もあります。

離職対策を進める際は、社員の声を丁寧に聞くことが重要です。

有効な方法としては、次のようなものがあります。

  • エンゲージメントサーベイ
  • パルスサーベイ
  • 入社後フォロー面談
  • 管理職へのヒアリング
  • 部署別の課題分析

社員の声を集めることで、自社にとって本当に優先すべき課題が見えてきます。

離職対策は、思い込みではなく、データと現場の声に基づいて設計することが大切です。

失敗例3:短期的な効果を求めすぎる

離職率の改善は、すぐに結果が出るものではありません。

1on1や評価制度の見直し、キャリア支援、オンボーディング強化などは、社員の信頼を少しずつ積み重ねる施策です。
効果が見え始めるまでに、半年から1年以上かかることもあります。

短期間で結果が出ないからといって施策を次々に変えると、現場は混乱し、かえって不信感を生む可能性があります。

重要なのは、施策ごとに目的と指標を決め、継続的に改善することです。

たとえば、次のような指標を確認するとよいでしょう。

  • 離職率
  • 入社後1年以内の離職率
  • エンゲージメントスコア
  • 1on1の実施率
  • 評価面談への納得度
  • 管理職への満足度
  • 社員の自由記述コメント


離職対策は短距離走ではなく、中長期で取り組む組織改善です。

🔹まとめ

賃上げは、離職対策において重要な施策です。給与水準が低ければ、社員の不満は高まり、採用競争力も低下します。

しかし、賃上げだけで社員の定着を実現することはできません。

社員が長く働き続けたいと思うためには、給与に加えて、次のような環境づくりが必要です。

  • 上司と安心して話せる関係がある
  • 自分の成長を実感できる
  • 評価に納得感がある
  • 管理職が部下に向き合う余裕を持てる
  • 社内に相談できる人やつながりがある
  • ライフステージに合わせて働き方を選べる
  • 入社後に丁寧なフォローを受けられる

本記事でご紹介した7つの対策は、次の通りです。

1.1on1ミーティングを定例化する
2.成長実感を得られるキャリアパスを設計する
3.評価制度の透明性を高める
4.管理職の負荷を組織全体で分散する
5.社内コミュニケーションを活性化する
6.柔軟な働き方の選択肢を広げる
7.入社後オンボーディングの質を高める

すべてを一度に実施する必要はありません。
まずは、自社の離職理由を把握し、課題に近い施策から1つずつ取り組むことが大切です。
小さな改善を継続することで、社員が安心して働き続けられる組織へと近づいていきます。

賃上げの次に必要なのは、社員が「この会社で働き続けたい」と思える職場づくりです。

離職・定着でお悩みなら、まずはご相談ください
「若手社員の離職が続いている」
「管理職が忙しく、部下のフォローまで手が回っていない」
「1on1や評価制度を導入したが、うまく運用できていない」
「自社に合った人材定着施策を知りたい」

このようなお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

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