「来月末で退職したいです」。SESの人事・営業担当者にとって、この申し出は突然に感じられるかもしれません。ですが本人の中では、ずっと前から迷いが始まっていることも多いもの。SESの離職防止で大切なのは、常駐エンジニアを孤立させず、退職を考える前の変化に気づける接点を持つことです。
客先常駐では、日々顔を合わせるのは常駐先の社員で、自社に悩みを伝える機会は限られがちです。この記事では、比較検討中の人事・経営層の方に向けて、1on1で聞くべきことと、孤立を防ぐ施策の選び方を整理します。
SESエンジニアの離職防止で見落とせない「孤立」の問題
SESエンジニアが離職する理由は、ひとつではありません。給与や単価、案件の内容、キャリアの見通し、人間関係など、いくつもの要因が重なって退職に至るのが一般的です。
そのなかで見落とされやすいのが「孤立」です。転職相談の現場でも、次のような声をよく耳にします。
- 「自社の誰に相談すればいいのか分からない」
- 「頑張っても、評価する人が現場を見ていない」
- 「このまま常駐を続けて、キャリアがどうなるのか見えない」
孤立そのものが退職理由になるとは限りません。ただ、ほかの不満を相談できないまま抱え込ませてしまう点で、影響は小さくないはずです。
帰属意識が下がると起きること|SES離職の典型的な流れ
自社との接点が減り、帰属意識が薄れていくと、多くの場合は次のような段階をたどります。
- 自社からの連絡や社内イベントへの反応が鈍くなる
- 面談で本音を話さなくなる
- 客先からの誘いや転職サイトのスカウトに目が向く
- 退職の意思が固まった状態で、はじめて相談が来る
厄介なのは、3の段階まで自社側からはほぼ見えないこと。つまり、帰属意識を高めること自体がゴールではありません。自社との接点を保ち、悩みを早めに把握し、会社として対応する。その積み重ねの結果として、帰属意識は育っていきます。個人的には、この順番を取り違えないことがSESの離職防止の出発点だと考えています。
SESの1on1では何を聞けばいい?|定着につながる5つの質問
困りごと・人間関係・キャリア・自社への要望・前回からの変化の5つを聞くと、進捗報告に偏らず本音を拾えます。
実際の問いかけ例とあわせて紹介します。
- 現場で困っていること:業務量や仕事の進め方、体調など。「最近、現場で一番しんどかったことは?」と聞くと、具体的な話が出やすくなります
- 人間関係・相談相手:「現場で気軽に話せる人はいますか?」の一言で、孤立していないかが見えてきます
- キャリア:今の案件で得ているスキルと、次に挑戦したい領域
- 自社への要望:会社にしてほしいサポートや、足りないと感じること
- 前回から変わったこと:「前回話していた件、その後どうですか?」と、前回の話の続きから入ります
個人的に効果を感じやすいのは、2番目の問いかけです。業務の話では出てこない本音が、ここでふっとこぼれることがあります。
頻度や時間は、ひと月に一度、30分ほどの枠が確保できれば十分。常駐開始直後など不安が大きい時期だけ間隔を詰める、といった柔軟さもあってよいでしょう。
うまくいかない1on1に共通すること
1on1を導入しても離職が止まらないケースでは、話の中心が進捗や勤怠の確認になっていたり、聞いた要望がその後どうなったのか本人に伝わっていなかったりすることが多いものです。
要望を伝えても次の回で何も触れられない。これが続くと、エンジニアは話すこと自体をやめてしまいます。1on1は「聞く場」である以上に「返す場」。叶えられない要望でも、検討した結果を伝えるだけで受け止め方は大きく変わります。
客先常駐エンジニアの離職を防ぐ、孤立させない施策
1on1は担当者に左右されやすいため、孤立を防ぐ仕組みは「人」ではなく「制度」として持っておくのが安心です。
| 施策 | 導入の手間 | 効果が出るまで | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 定期1on1 | 小〜中 | 数か月 | 何から始めるか迷っている |
| 帰社日・勉強会 | 中 | 数か月〜半年 | エンジニア同士の横のつながりが弱い |
| 社内チャット活用 | 小 | 比較的早い | 常駐先が分散していて集まりにくい |
| 評価制度の見直し | 大 | 半年以上 | 「評価されていない」という不満が多い |
| キャリアパスの見える化 | 中〜大 | 半年以上 | 若手・未経験入社のエンジニアが多い |
何から始めるか迷ったら、手間が小さく効果も出やすい「1on1」と「社内チャット」から着手するのがおすすめです。どれも特別な施策ではありません。ただ、「会社があなたを見ている」と伝え続ける仕組みがあるかどうかで、差は確かに出てきます。
SESの離職防止施策を比較するときの3つの視点
施策を選ぶときに見てほしいのは、継続できるか、属人化しないか、エンジニアの声が反映されるかの3点です。
年に一度のイベントより、毎月きちんと回る仕組みのほうが、地味でも効いてきます。また、熱心な担当者ひとりに頼った施策は、その人が異動した途端に止まりがちです。そして意外と見落とされるのが3つ目。エンジニアから出た意見が制度の見直しに反映されてはじめて、「言っても無駄」という空気が消えていきます。
現場ではよく「一気に始めて、どれも中途半端になった」という話を聞きます。手間の小さいものから始め、手応えを見ながら広げていく。遠回りに見えても、そのほうが結果的に定着は早いと感じています。
SESエンジニアの離職防止や、定着を前提にした採用の進め方にお悩みでしたら、Achieve Techの人材紹介サービスの無料相談をご活用ください。人材ビジネスの現場を知る担当者が、貴社の状況に合わせた打ち手を一緒に整理します。
よくある質問
Q1. SESの1on1は誰が担当するのがよいですか? A. 営業担当が兼ねるケースも多いですが、評価や案件の話と切り離して本音を聞くには、育成担当や先輩エンジニアが担うのが理想です。難しい場合は「1on1の時間は案件の話をしない」とルールを決めておくと効果的です。
Q2. 1on1を嫌がるエンジニアにはどう対応すればいいですか? A. 「評価のための面談」と受け取られている可能性があります。目的が相談とキャリア支援であることを最初に伝え、短時間・オンラインから始めると抵抗感が下がりやすくなります。
Q3. 離職防止施策の効果はどうやって測ればいいですか? A. 定着率の推移に加えて、1on1の実施率や、エンジニア向けの簡単なアンケート結果を定期的に確認すると、変化を捉えやすくなります。
監修:勝井|人材ビジネス業界 経験約20年・人材紹介事業部の立ち上げ経験あり・現役キャリアコンサルタント(延べ4,000名以上の転職サポート)|保有資格:キャリアコンサルタント(国家資格)/2級キャリアコンサルティング技能士(国家検定)/産業カウンセラー(民間資格)