職務経歴書が読みやすくなった――そう感じるSES企業の人事担当者もいるでしょう。生成AIによって、職務経歴書は「きれいに書ける」時代になりました。だからこそ人事担当者には、文章の完成度ではなく、その人が何を経験し、どこまで担当し、何ができるのかを確認する視点が求められています。
本記事では、職務経歴書の作り方の変遷から、AI活用のメリット・注意点、そして書類選考や面談で確認したいポイントまでを順に整理します。
1. 職務経歴書の作成方法はどう変わってきたか
職務経歴書の作り方は、時代とともに少しずつ変化してきました。大まかな流れは次のとおりです。
- 手書き:用紙に一枚ずつ手で書く。作成にも書き直しにも時間がかかった
- パソコン(Word等)での作成:修正が容易になり、複数の応募先に使い回せるようになった
- テンプレートの活用:ネット上のひな形を使うことで、体裁を整えやすくなった
- 転職サイトの作成ツール:項目に沿って入力する形式が広まり、書き漏れが減った
- 生成AIの活用:経験を箇条書きで伝えると、文章の整理・作成・添削まで手伝ってもらえるようになった
振り返ると、職務経歴書の書き方は、どの段階も「書く負担を減らす」方向に変化してきました。そして生成AIの登場によって、文章表現だけでは、応募者ごとの差を見極めにくくなってきています。
2. 生成AIによる職務経歴書作成はどこまで広がっているか
生成AIの使い方は人それぞれですが、職務経歴書づくりでは次のような活用が見られるようになりました。
- 担当した案件の内容を箇条書きで入力し、文章にまとめてもらう
- 自分で書いた経歴書を読みやすく添削してもらう
- 応募先の求人内容に合わせて、アピールする経験を整理してもらう
転職サービスの中にも、AIによる作成支援機能を提供するところが出てきています。求職者にとって、職務経歴書にAIを使うことは、もはや特別なことではなくなりつつある――採用側はそう捉えておくのが現実的かもしれません。
3. 職務経歴書にAIを活用するメリット
AI活用には、応募者・採用側の双方にとってのメリットがあります。
- 作成時間の短縮:一から文章を考える負担が減り、応募までのハードルが下がります
- 文章の整理:時系列や案件ごとの情報が整い、読み手にとって経歴の全体像がつかみやすくなります
- 言語化の支援:自分の経験をうまく言葉にできなかった人でも、強みを表現しやすくなります
特にSESエンジニアは、参画してきた案件の数が多く、経歴書が長くなりがちです。情報を整理する手段として、AIは相性のよい道具でしょう。
4. AIだからこそ生まれる職務経歴書の注意点
一方で、AIで文章を整えることによって生まれる注意点もあります。
- 経験以上に見える表現:「主導」「リード」「推進」など、実際の役割より大きく見える言葉が入りやすくなります
- 内容の均質化:誰が書いても似た文面になり、その人ならではの具体性が薄れやすくなります
例えば、「要件定義から設計・実装までを主導」と書かれていても、実際には要件定義は先輩社員が担い、本人は実装とテストが中心だった――ということも起こり得ます。これは必ずしも意図的な誇張とは限りません。自分で書いた内容をAIに「分かりやすく整えて」と依頼するうちに、表現が少しずつ大きくなることもあるからです。
5. 「AIで作った=悪い」ではない
ここは、ぜひ押さえておきたいポイントです。AIを使ったこと自体を、問題視する必要はありません。
Wordのテンプレートや転職サイトの作成ツールを使った経歴書を「手抜き」と評価しないのと同じように、AIも作成を助ける道具のひとつです。むしろ、自分の経験を伝えるのが苦手だった人にとっては、力を発揮しやすくなった面もあるでしょう。
監修者として転職支援に携わってきた中でも、AIの使い方には大きく2つのパターンがあると感じています。一つは、AIに文章づくりを任せきりにしているケース。もう一つは、AIと対話しながら自分の経験を整理し、書き進めているケースです。前者は、踏み込んだ質問をすると答えに詰まってしまうことが少なくありません。一方で後者は、経験の棚卸しができているため、深掘りしても自分の言葉で答えられる傾向があります。職務経歴書には特有の言い回しもあるので、それを補う意味でも、AIを上手に活用しながら作成すること自体は、良いことだと思います。
採用の場で確かめたいのは、書かれた内容と本人の実際の経験が一致しているかどうか。AIを使ったかどうかは、その答えを教えてはくれません。個人的には、AIの使用を見抜くことに時間を割くより、内容を確かめる仕組みを整える方が、採用の精度を高めやすいと考えています。
6. SES企業の人事担当者が職務経歴書で見るべきポイント
では、AI時代の職務経歴書は、どこに注目して読めばよいのでしょうか。文章の上手さではなく、「事実の粒度」に目を向けるのがおすすめです。
- 役割:「参画」「担当」「主導」のどれにあたるのか
- 担当範囲:チーム全体の成果なのか、本人が受け持った部分なのか
- 工程:要件定義・設計・実装・テスト・運用のどこを担ったのか
- 具体性:チーム人数、期間、使用技術やバージョンなど、数字や固有名詞があるか
- 経歴の一貫性:案件の流れの中で、スキルや役割が積み上がっているか
表現が整っていても、これらがあいまいな場合は、面談で確認したい点として整理しておくとスムーズです。
7. 面談・スキル確認で何を確認するか
面談では、「何をしましたか?」と聞くだけで終わらせず、もう一歩踏み込んだ質問を重ねていきましょう。
- 「なぜ?」:「なぜその技術や方法を選んだのですか」と、判断の理由を聞く
- 「どこまで?」:「その中で、ご自身が担当した範囲はどこまでですか」と、役割の実態を聞く
- 「自分で何を判断した?」:「チームの中で、ご自身が決めたことは何ですか」と、主体性を聞く
実際の経験について質問すると、具体的な状況や自身の役割を確認しやすくなります。回答が抽象的な場合は、「そのとき、チームは何名でしたか」「一番苦労したのはどの工程でしたか」など、事実を一つずつ一緒に整理していく聞き方がよいでしょう。問い詰めるのではなく、確認する姿勢で臨むことが、応募者の本来の力を知る近道です。技術的な深さを確かめたい場合は、現場のエンジニアの同席や、簡単な技術質問を組み合わせる方法もあります。
8. AI時代のSES採用は「前提のアップデート」から
AIを禁止するのは、あまり現実的ではありません。これから必要なのは、AI利用を前提に選考方法をアップデートしていくことです。
- 書類選考では、文章の完成度より「事実の具体性」を見る
- 面談では、経歴書をもとに「経験の中身」を確認する
- 人事自身もAIを活用し、経歴書の要点整理や質問案づくりに役立てる
AIを敵視するのでも、AIに任せきりにするのでもない。この中間の立ち位置こそが、これからのSES採用に合っているのではないでしょうか。
まとめ:AI時代だからこそ「何を経験し、何ができるのか」を確かめる
AIによって、職務経歴書は「きれいに書ける」時代になりました。だからこそ人事担当者には、文章の完成度ではなく、その人が何を経験し、どこまで担当し、何ができるのかを確認する視点が重要になっています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. AIで作った職務経歴書は見分けられますか?
A. 表現が均一で整いすぎているなどの傾向が見られることはありますが、文章だけで確実に見分けるのは難しいのが実情です。見分けることにこだわるより、面談で経験の中身を確認するほうが、実際のスキルを把握しやすくなります。
Q2. 経歴書の表現が実態より大きいと感じたら、どう確認すればよいですか?
A. 「ご自身が担当した範囲はどこまでですか」「チームは何名で、どのような役割分担でしたか」など、役割と範囲を具体的に聞くのが効果的です。問い詰めるのではなく、事実を一緒に整理する姿勢で質問すると、確認しやすくなります。
Q3. 社内に技術面を確認できる人がいない場合はどうすればよいですか?
A. 人事側では経験のエピソードや判断の理由を聞く質問を用意し、技術面は簡易的なスキルチェックや外部の専門家で補う方法があります。人材紹介会社に相談し、見極めの観点を共有してもらうのも一つの手です。
監修:勝井|人材ビジネス業界 経験約20年・人材紹介事業部の立ち上げ経験あり・現役キャリアコンサルタント(延べ4,000名以上の転職サポート)|保有資格:キャリアコンサルタント(国家資格)/2級キャリアコンサルティング技能士(国家検定)/産業カウンセラー(民間資格)
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