はじめに
「AWSを扱えるエンジニアが社内にいない」
「採用したくても、即戦力のAWS人材がなかなか見つからない」
こうした悩みを抱える企業が増えています。
クラウド活用が当たり前になりつつある今、AWS(Amazon Web Services)を使いこなせる人材の需要は年々高まっています。一方で、採用市場に出てくる経験者は限られており、大手企業やITコンサルティング会社との人材獲得競争も激しくなっています。
特に中小・中堅企業では、条件面で大手と競り合うのが難しく、採用できたとしても定着しないという課題に直面しがちです。
では、AWS人材を確保するにはどうすればよいのでしょうか。
採用だけに頼るのではなく、今いる社員を育てる仕組みをつくることが、これからの現実的な選択肢になります。
この記事では、AWS人材不足が深刻化している背景を整理しながら、社内育成でAWS人材を確保するための進め方や注意点を解説します。
自社でAWS人材を育てたい方、育成体制をこれから整えたい人事・経営担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
AWS人材不足が深刻化している理由
AWS人材不足は、一時的な採用難ではありません。
企業のクラウド活用が急速に進む一方で、AWSを実務で扱える人材の育成が追いついていないことが大きな要因です。
企業のクラウド移行が加速している
近年、DX推進やシステム刷新の流れを受けて、オンプレミス環境からクラウドへ移行する企業が増えています。
その中でもAWSは、世界的に高いシェアを持つクラウドサービスです。国内でも、基幹システムの移行、新規サービス開発、データ活用基盤の構築など、さまざまな用途で導入が進んでいます。
AWSの活用が広がっている背景には、次のような理由があります。
- サーバー調達や運用の負担を減らせる
- 必要に応じて柔軟にリソースを増減できる
- 新規サービスを素早く立ち上げられる
- 災害対策やセキュリティ強化に活用できる
- インフラコストを最適化しやすい
こうしたメリットから、業種や企業規模を問わずAWSの導入が進んでいます。
その結果、AWSを設計・構築・運用できる人材へのニーズが一気に高まっています。
IT人材不足そのものが深刻化している
AWS人材不足の背景には、IT人材全体の不足もあります。
経済産業省の調査では、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると試算されています。クラウド、セキュリティ、AI、データ活用といった領域では、特に人材不足が目立ちます。
AWS人材は、短期間で簡単に育つものではありません。
ネットワーク、サーバー、データベース、セキュリティ、監視、コスト管理など、幅広い知識が必要です。さらに、AWSのサービスは日々アップデートされるため、学び続ける姿勢も欠かせません。
人材供給が追いつきにくい理由としては、次のようなものがあります。
- 学校教育だけではクラウド実務を十分に学びにくい
- AWSを実際に触れる実務環境が限られている
- 技術の変化が速く、学習内容の更新が必要になる
- 経験者に業務が集中し、育成に時間を割きにくい
つまり、採用市場に十分なAWS経験者が出てくるのを待っているだけでは、必要な人材を確保しにくい状況になっています。
採用だけでAWS人材を確保するのが難しい理由
AWS人材を外部から採用しようとすると、多くの企業が同じ壁にぶつかります。
それは、採用したい企業の数に対して、候補者が圧倒的に少ないことです。
年収水準が高くなっている
AWSの実務経験者やAWS認定資格を持つエンジニアは、採用市場で高く評価されます。
特に、AWS環境の設計・構築・運用を一通り任せられる人材であれば、年収700万円以上、経験によっては1,000万円を超える条件で採用されることも珍しくありません。
中小・中堅企業にとっては、こうした年収水準で継続的に採用することは簡単ではありません。
採用できても定着するとは限らない
苦労して採用できたとしても、安心はできません。
AWSスキルを持つ人材は転職市場での需要が高いため、より良い条件を提示する企業に移ってしまうリスクがあります。
特定のエンジニアにAWS関連業務が集中している場合、その人が退職した途端にプロジェクトが止まることもあります。
即戦力人材は市場に出にくい
本当に実力のあるAWSエンジニアは、そもそも転職市場に出てこないことも多いです。
現職で重要なポジションを任されていたり、ヘッドハンティングで声がかかっていたりするため、一般的な求人だけで出会うのは難しくなっています。
そのため、採用活動に時間と費用をかけても、思うような成果につながらないケースが増えています。
採用依存がもたらすリスク
AWS人材の確保を採用だけに頼ると、企業にはさまざまなリスクが生まれます。
採用コストが膨らむ
求人広告、人材紹介会社への手数料、面接対応、内定者フォローなど、採用には多くの費用と工数がかかります。
人材紹介を利用した場合、理論年収の30〜35%程度が紹介手数料として発生することもあります。年収800万円の人材であれば、採用時に200万円以上の費用がかかる計算です。
しかも、採用できなければその時間と労力は回収できません。
プロジェクトが遅れる
AWS人材が確保できないことで、クラウド移行や新規サービス開発が予定通り進まないことがあります。
結果として、サービスリリースの遅延、運用コストの増加、競合他社への遅れといった問題につながります。
人材不足は、単なる人事課題ではなく、事業成長にも影響する経営課題です。
技術が属人化する
外部から採用した一部の人材にAWS業務を任せきりにすると、社内にノウハウが残りにくくなります。
設計の意図、運用ルール、障害対応の判断基準などが個人に依存してしまうと、担当者が異動・退職した際に大きな混乱が起こります。
AWSを事業基盤として活用していくなら、個人ではなく組織として技術力を蓄積することが欠かせません。
AWS人材不足を解決する鍵は社内育成にある
採用が難しいからこそ、今いる社員を育てる発想が重要になります。
社内育成であれば、自社の業務や文化を理解している社員にAWSスキルを身につけてもらえます。ビジネス理解と技術スキルを兼ね備えた人材を育てられる点は、外部採用にはない大きな強みです。
社内育成のメリット
社内育成には、採用と比べて次のようなメリットがあります。
| 比較項目 | 採用 | 社内育成 |
|---|---|---|
| コスト | 高額になりやすい | 計画的に抑えやすい |
| 定着 | 条件次第で流動的 | 自社理解があり定着しやすい |
| 業務理解 | 入社後にキャッチアップが必要 | すでに業務や顧客を理解している |
| ノウハウ | 個人に依存しやすい | 組織に蓄積しやすい |
| 拡張性 | 採用人数に左右される | 仕組み化すれば継続的に育成できる |
もちろん、社内育成にも時間はかかります。
しかし、育成の仕組みを一度つくれば、継続的にAWS人材を増やせます。長い目で見れば、採用だけに頼るよりも安定した人材確保につながります。
社内でAWS人材を育てる3つのステップ
AWS人材の育成は、思いつきで研修を受けさせるだけではうまくいきません。
誰を、どのレベルまで、どの順番で育てるのかを決めたうえで進めることが大切です。
ステップ1:育成対象者を決め、現状スキルを把握する
まずは、誰をAWS人材として育てるのかを明確にします。
全社員に同じ研修を受けさせるのではなく、AWSに関わる可能性が高い部門や職種から優先して育成するのが現実的です。
優先的に育成したい対象者は、たとえば次のような社員です。
- インフラエンジニア
- SRE・運用保守担当者
- アプリケーション開発者
- 情報システム部門の担当者
- プロジェクトマネージャー
- 技術部門のリーダー候補
対象者を決めたら、現在のスキルを確認します。
確認したい項目は次の通りです。
- ネットワークやサーバーの基礎知識
- AWSサービスの利用経験
- プログラミングやスクリプトの経験
- セキュリティや運用の理解度
- 今後のキャリア志向
- 学習に使える時間
現状を把握することで、基礎から学ぶべき人、実践演習に進める人、資格取得を目指す人など、適切な育成プランを立てやすくなります。
ステップ2:体系的な研修プログラムを用意する
AWSはサービスの種類が多く、独学だけでは学習範囲が広がりすぎてしまうことがあります。
そのため、基礎から実践まで段階的に学べる研修プログラムを用意することが大切です。
おすすめの流れは次の4段階です。
1. 基礎フェーズ
AWSの基本概念や主要サービスを学びます。
たとえば、EC2、S3、RDS、VPC、IAMなど、AWSを扱ううえで欠かせないサービスを理解します。
ここでは、AWSの用語を覚えるだけでなく、なぜそのサービスを使うのか、どのような場面で必要になるのかまで理解することが重要です。
2. 実践フェーズ
実際にAWS環境を操作しながら学びます。
たとえば、仮想サーバーの作成、ネットワーク設定、データベース構築、権限設定、監視設定などをハンズオン形式で行います。
手を動かして学ぶことで、知識が実務につながりやすくなります。
3. 応用フェーズ
実際の業務に近いシナリオで演習します。
たとえば、WebアプリケーションのAWS移行、障害発生時の調査、セキュリティ設定の見直し、コスト削減の検討などです。
単にサービスを使えるだけでなく、業務上の課題に対してAWSをどう活用するかを考える力を養います。
4. 資格取得フェーズ
AWS認定資格の取得を目指します。
はじめはAWS Certified Cloud Practitioner、次の段階でAWS Certified Solutions Architect - Associateを目標にすると、学習の道筋がつくりやすくなります。
資格取得はゴールではありませんが、知識の定着度を確認する指標として有効です。
ステップ3:研修後も学び続けられる環境をつくる
AWS人材育成で特に大切なのは、研修後のフォローです。
研修を受けただけで終わってしまうと、せっかく学んだ知識も実務に定着しません。
研修後は、次のような仕組みを整えると効果的です。
- 社内勉強会を定期的に開く
- 学んだ内容をチーム内で共有する
- 小規模なAWS関連業務を任せる
- AWS資格の受験料や教材費を補助する
- メンターに相談できる体制をつくる
- 1on1で学習進捗や課題を確認する
大切なのは、学んだことを実務で使う機会をつくることです。
小さな業務でも構いません。AWSの設定確認、運用手順の見直し、コストレポートの確認など、実務に触れる機会を増やすことでスキルは定着していきます。
外部研修を活用すると育成は進めやすくなる
社内だけでAWS人材育成の仕組みをつくるのが難しい企業も多いはずです。
特に、社内にAWS経験者が少ない場合、カリキュラム設計やハンズオン環境の準備、受講後のフォローまで自社で行うのは大きな負担になります。
その場合は、外部研修の活用が有効です。
外部研修には次のようなメリットがあります。
- 最新のAWS情報を踏まえた内容で学べる
- 実務経験のある講師から学べる
- 自社で教材や演習環境を用意する手間を減らせる
- 短期間で集中的に学習できる
- 役割やレベルに合わせてカリキュラムを調整できる
- 資格取得まで見据えた学習計画を立てやすい
すべてを外部に任せる必要はありません。
基礎研修やハンズオンは外部研修を活用し、研修後の実務機会や社内勉強会は自社で用意する。こうした組み合わせにすると、無理なく育成を進められます。
AWS人材育成でよくある失敗と対策
社内育成は効果的な方法ですが、進め方を間違えると期待した成果が出ません。
ここでは、よくある失敗とその対策を紹介します。
失敗1:研修を受けさせて終わりにする
よくあるのが、研修を受講させただけで満足してしまうケースです。
研修はあくまできっかけです。学んだ内容を実務で使わなければ、知識はすぐに薄れてしまいます。
対策として、研修後1ヶ月以内にアウトプットの機会をつくりましょう。
たとえば、次のような取り組みが有効です。
- 学んだ内容をチーム内で発表する
- AWS環境の設定確認を担当してもらう
- 小規模な改善タスクを任せる
- 研修後に振り返り面談を行う
研修と実務をつなげることで、学習効果は大きく変わります。
失敗2:責任者や予算が曖昧なまま始める
育成を始める前に、誰が責任を持つのか、どの予算で進めるのかを決めておく必要があります。
ここが曖昧なままだと、通常業務が忙しくなったタイミングで育成の優先順位が下がり、途中で止まってしまいます。
最初に決めておきたい項目は次の通りです。
- 育成責任者
- 対象者
- 年間予算
- 研修の実施時期
- 目指すスキルレベル
- 資格取得支援の有無
- 研修後の実務アサイン
人事部門だけで進めるのではなく、技術部門や経営層も巻き込むことが重要です。
AWS人材育成は、単なる研修施策ではなく、事業を支える人材戦略として位置づける必要があります。
失敗3:全員に同じカリキュラムを受けさせる
AWSといっても、職種によって必要なスキルは異なります。
インフラエンジニア、アプリケーション開発者、運用担当者、プロジェクトマネージャーが、まったく同じ内容を学んでも、実務に直結しない部分が出てきます。
役割別に必要なスキルを整理すると、たとえば次のようになります。
インフラエンジニア
- EC2
- VPC
- IAM
- Security Group
- CloudFormation
- Auto Scaling
- ELB
アプリケーション開発者
- Lambda
- API Gateway
- DynamoDB
- S3
- CloudFront
- CodePipeline
運用担当者
- CloudWatch
- Systems Manager
- AWS Backup
- Cost Explorer
- CloudTrail
- Trusted Advisor
プロジェクトマネージャー
- AWSの基本構成
- クラウド移行の進め方
- セキュリティとコストの考え方
- ベンダーや技術者との会話に必要な基礎知識
役割に合わせて学習内容を変えることで、受講者の納得感も高まり、実務への活用もしやすくなります。
失敗4:短期間で成果を求めすぎる
AWS人材育成には一定の時間が必要です。
数日間の研修だけで、すぐに本番環境の設計や運用を任せられるようになるわけではありません。
無理な目標を立てると、受講者に過度な負担がかかり、学習意欲を下げてしまいます。
現実的には、次のようなスケジュールで考えると進めやすくなります。
| 期間 | 目標 |
|---|---|
| 1〜3ヶ月目 | AWSの基礎理解、Cloud Practitioner取得 |
| 4〜6ヶ月目 | ハンズオン演習、小規模な実務参加 |
| 7〜12ヶ月目 | Solutions Architect - Associate取得、実務での担当範囲拡大 |
| 1年以降 | 設計・運用の主担当、後輩育成への参加 |
短期的な成果だけでなく、半年後、1年後にどのような役割を担ってほしいのかを決めておくことが大切です。
社内育成を成功させるポイント
AWS人材育成を成功させるには、次の4つを押さえておく必要があります。
- 育成対象者と目標レベルを明確にする
- 基礎から実践まで段階的に学べる研修を用意する
- 研修後に実務で使う機会をつくる
- 継続学習を支援する制度を整える
特に重要なのは、研修を単発で終わらせないことです。
社内勉強会、資格取得支援、メンター制度、実務アサインを組み合わせることで、AWSスキルは少しずつ組織に根づいていきます。
AWS人材を一人だけ採用するのではなく、社内に複数名の理解者を育てる。これが、長期的に見て強い組織づくりにつながります。
まとめ
AWS人材不足を採用だけで解決しようとすると、コスト、時間、定着、属人化といった課題にぶつかります。
もちろん採用が不要になるわけではありません。経験者の採用は有効な手段です。
ただし、採用だけに頼るのではなく、今いる社員を育てる仕組みを並行してつくることが重要です。
AWS人材育成を進める際は、次の3ステップから始めましょう。
- 育成対象者を選び、現状スキルを把握する
- 基礎・実践・応用・資格取得まで学べる研修を用意する
- 研修後も学び続けられる環境を整える
この流れをつくることで、自社の中にAWSスキルを持つ人材を継続的に増やせます。
まずは、現在どの部門にAWSスキルが必要なのか、誰を育てるべきなのかを整理するところから始めてみてください。
採用に頼りきらない体制を整えることが、これからのクラウド活用を支える大きな力になります。
AWS人材育成のご相談はAchive Techへ
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